鳴かない猫/nonya
 


ある日の深夜

僕をじっと見る
餌の器をじっと見る
再び僕をじっと見る

知らんぷりして
パソコンに向かっていると
いつの間にか後ろに回り込んで
爪が出ていない肉球で
僕の背中をトントンする

鳴けばいいのに
お腹がすいた




ある日の早朝

鏡の中の僕を見上げる
風呂場のドアを見上げる
再び鏡の中の僕を見上げる

面倒臭くて
そのまま髭を剃っていると
いったん視界を外れてから
思いっ切り爪を出して
僕の太股に攻撃を仕掛けてくる

鳴けばいいのに
風呂のふたの裏側に溜まった
水滴が舐めたい




ある
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