pendius/mizunomadoka
 
「ううん、きてくれてありがとう」
 そういって僕は紅茶を注いだ。
「熱いから気をつけて」
「ありがとう」

 再び静寂が訪れて、紅茶の香りが強くなる。
風の音がきこえる。カタカタと揺れる窓。雨の影。
彼女はカップを見つめている。
ストーブの微かな光だけで不安定に揺れる彼女が
今にも消えてしまいそうで、僕は火を強めた。

 夜は明けなかった。時計を見ると一時半のままだった。

「ねえ」
「なに?」
「時計がとまってる。それに時間も流れてないみたい」
「知ってる。私の時計もとまってるから。
それに雨と風も同じ所をくり返してるみたい」
「それで外を見てたの?」
「う
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