死にたがりとの出会いのうた/板谷みきょう
った
入院してベッドで寝たきりの彼が
半年が過ぎた頃に
飛び降りた時のことを
話してくれた
足がビルから離れた瞬間に
「マズイ!」
「やらなきゃ良かった。」
取り返しの付かない気持ちに襲われ
失神することもなく、そのまま
地面に落ちるまで
意識はしっかりとあり
その時間は長く感じた
暫くして
自分の下半身から
凄まじい音が聞こえてきた
とめどなくそんな話をした後
彼は、窓の外に目を移して
「生きてて良かった。」と
小さく呟いた
不自由な体で
車椅子で暮らす彼が
今
どうしているかは分らない
けれども
刹那に後悔しない為に
命ある限りは
生きるに任せるしかないさだめを
その時に知ったのだもの
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