即興(春を待つからだ)/橘あまね
遠くのほうで 貝殻色の天蓋に
やがてちいさな穴があき
こぼれる石笛の一小節を縫い付けた
あかるい羽衣の 恵みを象徴してもたらされるもの
鉱物たちがふくんでいる 大きな知恵の営みと
なまの肉が発する熱っぽい言葉
深いところから分かち合うひとしずくです
息を凝らして 拍をかぞえて
刻むことのひそやかな歓び
互いを見つめる区切りごとに
新しい季節が隠れている
温度をたくわえて 動作を秘めて
光を待つかい 追いかけるかい
暦を書き込まれていく一条一条に
無二の配色があり
読み上げられるあえかな文字たちの
すべらかな刹那
流れるとおりに 運ばれるままに
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