尊敬をこめて/ただのみきや
あなたは
黒いショールの隙間から
少しだけ
見せてくれた
嘘も真もなく
構えもせず
力を抜いて
雲間の月のように
鉄筆で深く
刻まれた詩
人生の一片一片
散りゆく時を知り
その色合いは
艶やかで 深く
人の心に
はらはらと降積る
だが太陽を免れたやわ肌のように
燐光を放つ密やかな熱情が
その翼を休める静謐の鳥籠は
いつも開け放たれているのだ
あなたに
何を伝えよう
あなたに
何を捧げよう
何も
ただ恋愛にも似た
尊敬をこめて
この一篇を
あなたに
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