完成品/ただのみきや
 
から

わたしは自分をみじめなんて微塵も思っておりません
わたしは記憶しています
まだ廃材であったころ
温かいエミちゃんの手がわたしをつかみ
いろいろと外科手術をしているあいだ
まだ何も思考せずただ温かみと釘の感触だけを感じていました
やがて最後にエミちゃんが目の突起をわたしの顔につけた時
わたしの目がはじめて見えるようになり
わたしの耳がはじめて聞こえるようになったのです
すると 息がかかるほど近くに エミちゃんの真剣な顔が
わたしを見つめていて その目の中にわたしの姿が映っていて
エミちゃんは 突然 それは嬉しそうに笑って
「やった完成した」と言ったのです
そう 
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