なまぬるい嘘/AquArium
 


世界が私を
弄んでいる
と、
思いこみたくて
顔を埋める


―50秒もすれば
胸が苦しくなる
逃れられない
浮遊体になっていく私の薄っぺらい嘘―


ああ
些細な沈黙のあとの
笑い方や視線の泳がせ方を
私は知らないのに
浴槽の君は知っているね


飛び散った泡の粒で
なぞった未来が
あっ
と言う間に消えてしまう


もっと冷まして
もっと温めて
温度調節の効かない
無意味な空間の水蒸気、ぼんやり


じっとしていると
頬が湿っていくけど
もしかすると
涙かもしれないね


注ぎすぎると
一瞬で排水溝に
消えてしまうことも
分かっているから、切ない


そうしている間に
流れ出ていく
嘘のあけた穴からこぼれる水
塞ごうと足を絡める栓は錆びている


なまぬるい浴槽の真ん中で
屈折した身体が
心地よさと引き換えに
退化していく夜


ああ、
このまま
美しい
水死体になりたい

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