『2月ローン』/木製金属
 



「行かないで」

遠くで聞こえた気がした17時55分
あまりに寒い夕方には
温かい缶コーヒーに手が伸びてしまう
一時的なぬくもりを
誰もが求めてしまう

コンビニの電球の下では
くたびれた労働青年が口元に火を灯していく

行き先を見失った僕らは無口で
決まって下を向いては
吸い終わるとすぐに
逃げるようにその場から消えてしまう

野菜が足りない生活に戻ったのは
君と別れてからだろう
たまには顔出しなさいと昨日の電話
家族はまだどうも苦手なままで

夕闇が街を染め始めた頃
僕は帰り道に戻っていった

コウノトリが僕を嘲笑っている
日に焼けた雑誌のグラビアが僕を見つめてる
いつの間にか冷めてしまった缶コーヒー

「休みがほしい」

口には出さず
あの空へ溶かした

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