春はその子供たちを見つめ続けている/ただのみきや
 
雪が融ければ ぼくは
陽射しを探しながら
現れた冬の排泄物に
いつものようにがっかりするだろう

春が 出入りする雀のように
あちこちでさえずる時
ぼくは自分の年齢を思い出して
陽炎が立ちのぼる記憶の中の出来事と
現実世界との境界の曖昧さに
ぼんやりとしながら戸惑うことだろう

暖かな風が吹き始めると
いっせいに息吹く楽しげな夢たちが
若い者にも老いた者にも
気の早い桜の花びらとなって
その眼や肩に軽々と憩うことだろう

雪どけで増水した川は
ごうごうと流れ下り
時の流れの絶対的な速さを
人々の無意識に堆積させ
人の生は四季のようにめまぐるしく移り変わり
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