既製品/マフラーマン
 
バスガイドのお姉さんが
窓の外の一点を指して
あすこに見える工場の群れは
一年中休まず働いておるんですよ
と言った

あそこでは
昼も夜も絶え間なく
正義と悪をびん詰めにして
世界中に出荷している

地球に人類が生まれたときから
工場の群れは水平線のかなたで
近づけども近づけども遠のいていく
あの水平線のずっと向こうの消失点で
いつだって夕陽を受けて燃えてきたのだろう

バスはずっと海沿いを走っている
工場は今も
びん詰めの正義と悪を
私たちが死に絶えるまで
戻る   Point(2)