情景/絶倫号
 
紫色の太陽が、民家の何色かもわからない屋根に
なめるように沈みかけている。
ビルの片隅や、路地の吹き溜まりに
どんなに目を凝らしても見る事の出来ない暗い影を落とす。
そしてその紫色の太陽は
僕達にどこまでも続く暗く長い陰を落とした。
今まで落としてきた大事なものが
自分の体に纏わりつき、離れてくれない。

今まで落としてきた大事なものは
やがて自分の足元にヘドロのように溜まっていくかもしれない。
もしも、溜まっていくものだとしたら
紫色の太陽が屋根の中へと沈む瞬間に感じる
得体の知れない不安と
全てを許されたような朴訥とした安堵は
僕達みんなが距離を越えて、
同じ舟に乗っているか
もしくは、ただ一緒に沈んでいくかしているからかもしれない。

太陽が沈みきり、街の灯りがともり始め
通りに立つ街灯を、暗がりからながめると
ふと、そんな事を思う。
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