君/salco
震動が?
外界に対する執着を全く感じなくなっても
君にはまだ生きながらえる理由があるんだよ
しかし自分と向き合い続けるというのは
往々耐え難い賽ノ河原じゃないか
こんな死体みたいなお荷物を
しかも生きている限り曳きずらなければならない
そして君のは他人のより
僅かに重いのかも知れないが
到達点も示されぬのに重荷をずるずる振り返れば
足跡一つ無いのだ
ただ遥か前方には
人生をすっかり習慣化したもう一人の君が
半透明の巨人よろしく穏やかなバカづらをして
うたた寝しているのが見える
あれこそは生が付与する至高の境地と言わんばかりに
それはそうだ
一つの生が終った後に残るのは
生活の残骸と色も褪せた作品群で
反吐と血反吐にまみれて来た魂ではない
ああ、
と君の役立たずな溜め息が洩れる
俺は一体こんな所で何をしているのか
徒労の苦悶が君の舞台だ
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