受話器/草野春心
 


  橋の下の叢に
  ひっそりと落ちていた
  真珠色の受話器と
  捩れてしまった一本のコード
  その先は川に入っていて
  その更に先は
  わからない
  暮れ時、水面には
  ふたつめの夕日が燃え
  ふたつめの僕が揺らめき
  どこかで
  だれかが
  なにかを喪っていた




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