三面鏡/そらの珊瑚
子供の頃
古めかしい三面鏡が
部屋の隅にありました
木目模様の板に貼られた
三枚の鏡はそれぞれに
蝶番によってつながっていて可動式でした
普段は折りたたまれているのだけれど
ぱたりぱたりと
解体すると
三つの世界が現れました
自分の顔は確かにひとつのはずなのに
鏡に映った顔は倍々ゲームのように
増えていきます
鏡に映った顔があります
鏡に映った顔がまた鏡に写し取られ
その顔達が互いにまた見つめ合っています
いくつもの眼が
三面鏡の中にありました
そのひとつひとつは
自分であって
ほんとうの
自分ではありません
人は
鏡に映った自
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