こわれてるってば/竜門勇気
ってるよ
ぼくのなにかが壊れてるから
楽しくもないときも
楽しいですねーなんて
笑ってるのさ
みんながぼくが楽しんでると錯覚すれば
ぼくの世界以外では
確実にぼくは楽しんでるのさ
それでいい
というかどっちでもいいんだけど
三つの釦付きのラジオは
とっくに電池切れで
縞々の尻尾の猫は
六年前に死んだ
それでも音楽は聞こえるし
背伸びをしながらフローリングに
爪を立てる音も聞こえる
甘い砂糖菓子の匂いはするけど
それを作ってくれる人なんてぼくにはいない
テレビも本もそこにはあるけど
ぼくの目はそれを映さない
電池切れのラジオは鳴ってるのかも知れないけど
ぼくの耳はそこにあるだけで
感じる場所が壊れてる
こわれてるってば
こわれてるってば
教えないで 誘わないで
喋らないで 構わないで
こわれてるってば
こわれてるってば
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