かまぼこ型 どんぶり型/ただのみきや
 
吹き荒ぶ二月の夕刻
山裾の疎らな住宅を
訪問営業でまわるのは
 実に 切ない
長靴ギリギリの雪をこぎ
通りから玄関までの細道を通りぬけ
もはや顔面がかじかみ
鼻水が垂れている感覚すらない
インターホン越しに名乗った途端
つららの如き「結構です」
口裏を合わせているのかと思うくらいに繰り替えされる

幸いアタマは冷やされっぱなしで
薄暗闇に黒々とした輪郭の山脈を眺めては
まったく優しくない自然の美しさに 
されるがままにボンヤリ立ちつくしたりもする
  
 ふと見上げると
 雪雲に覆われた
 半月ひとつ…

この位置からだと かまぼこのかたち
日本美人の目
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