街のにおいを少しだけ嗅ぐ/ホロウ・シカエルボク
 
るのかもしれないな。拍手も、称賛も、スポットライトのひとつもない勝ちかもしれないけどさ。薄暗い店内の照明のなかで読むそんなニュースには、なにかいまの気分にしっくりきすぎるものがあった。本を閉じて、レジで精算してもらった。店を出た途端に強く冷たい風が横から叩きつけてくる。巨人の平手を喰らったような感じさ、コミックでよくあるだろう、人間離れしたサイズの悪役とかさ…あんな感じ。信号を待ちながら何事かを考えたのだけれどすぐに忘れてしまった。赤信号に変わるぎりぎりで突っ込んできた車のステレオから聞こえていたくだらないヒップ・ホップのせいさ。打ち込みのビートで身体を揺らすような真似だけは絶対にしないぜ。信号を
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