反転した世界ーーー夢/yamadahifumi
 
のが遅くなり、そしてブラックホールにーーーその事象の境界線に到達するや否やーー本当は「否や」という言葉も使えないのだがーーーその時計の針は止まる。壊れたのではない。次の一秒が永遠にやってこないのだ。これがどういうことか分かるかね?」
 「いいえ」
 「実はこの時も「時」は動いている。内在しているのだ。この宇宙飛行士の内に、まだ。その事象の境界線上に時はまだあるのだ。ただ、それは動いていないのだ。ーーーいや、違う。違ったな。それは動かない時の中をめくるめく動いているのだ。それが永遠というものだ。君にはこの比喩はわかるかね?」
 「いいえ」
 「・・・まあ、よろしい。そうして彼らは永遠に終わり
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