あんまり寒いから今夜は熱燗にします/花形新次
かったよ
何度目かに
きみの向いている方角には
僕の思いも寄らない景色が広がっていることに気づいたんだ
きみが信じて疑わなかったものの正体が
やっとわかったんだ
根拠がないと思われたものは
実は、母胎に裏うちされた確かなものだったのだと
僕の腐りかけの細胞は
きみの混じりけのない針で突かれ
ドロドロとした毒素をすべて吐き出してしまったみたいだ
街は凍りついていた
きっと、ずっと凍りついたままだ
でも、今の僕には
小さな火が見えはじめている
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