あんまり寒いから今夜は熱燗にします/花形新次
 
街は凍りついていた
遠くで元血統書付きの野犬が唸り声を上げている
路上に放置された氷点下の水槽では
オレンジと赤と黒の模様の金魚が固まり
夏向きのお洒落なスイーツに見える

この冬の寒さは異常だ
寒さに震えるあまり
骨の軋む音が聞こえるようだ

眼前に広がる先進的な荒野には
空白の表情で人々が屯している
彼らを見ていればわかる
都会の、この街の寒さは単純ではない
とても厄介で、しかも執拗だ
ポツリポツリとある仄々とした灯りも
目を凝らすと透き通った青色をしている

「キ・・・ボ・・・ウ」
きみが奥歯を鳴らしながら口にしたとき
僕は正直何のことだか分からなかっ
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