ブルーアウト/月見里司
着崩されていない制服が、吹き込んだであろう雨で湿って、
(人魚が遠くで歌っている。)
細い声が重なって聞こえ、それが従妹の物と気付くのに時間がかかる。
言葉を探しているとき、目が合った。
(誰かが去る気配。)
どうにか絞りだした、風邪をひく、という声だけを置いて、
従妹の返事を待たずにその場を後にした。
/精進落とし
線香の匂いが染み付いた喪服をかけ、空調を入れる。
まだ、電車の中に居るような感覚が消えない。
携帯電話に体調を心配するメールが届いていたが、返事は明日にする。
母から貰ったタッパーの中には、
少しの肉と野菜の膾、刺身が入っていた。
時折点滅する電灯の下でただ赤いだけの刺身。
ひとつ頷いて、鍋の味噌汁を煮返す。
夕食と言うには、やや遅い。
//2011年1月
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