夢のつづき (夢喰植物)/乾 加津也
+死ぬほどの景観+
かなりの標高を誇る観光地にいる
ペンションだか旅館だかのようになっている施設から少し歩くと
世界一の絶壁に立てる
そこから臨む景色はといえば
死ぬほど美しい
(美しすぎるとは怖ろしいと同義だ)
(誇張でなく、あきらかに死と隣り合わせた)
遠くは海
海の手前は中国の農村を思わせる平原地帯が絹のように広がり
こちら手前の山の中腹から向こうにかけてかかる霧がうすい
どんなに悪い視力でも霧の下以外はくっきりと見渡せる
澄んだ大気までが見える
柵もないから
この場所から飛び込むこともできる
幻想はどんどん膨らんでゆく
呼吸が速くめまいがする
すぐにここから離れなければ
わたしが景色に吸い込まれる
後ずさりしてトラックの荷台に引き篭もる
幌の中で息を殺していると
外は雨になる
(すぐに次の映像が始まった)
わたしはその意味を問わない
ただ、わたしのもうひとりの潜在として
そこにいる
戻る 編 削 Point(19)