鍵と錠/たにい
 
昔々 男の子はちっちゃな銀の鍵を握り締めて産まれて来ました
可哀想に男の子は15歳になると家を出されるのです
旅してその鍵で開けることのできる唯ひとつの扉を見つけるために

女の子はちっちゃな瑪瑙の玉を握って産まれて来ました
瑪瑙玉には錠が掛かっていて可愛らしい鍵穴まで付いているのです
女の子は自分にぴったりの鍵を持った王子様を待ちながら玉を育てていました
長い長い間 可哀想そうに

それでもピッタリ合う鍵と錠が出会うのは稀なことでした。

唯一の相手と巡り会ったふたりは嬉しくて子作りに励みます
昔のひとが子沢山なのにはこういう訳があるのですよ

今でもたまに先祖帰りする子供がいます
心の中に銀の鍵や瑪瑙玉を持って産まれて来るのです
そんな子供たちにとって唯一の相手と出会うのは昔より稀になってしまいました
だって心の中は見えませんでしょう?可哀想に
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