わたしのいろ/草野春心
私があなたを好きになった日、
私の心は赤かった
闇夜に灯った明るい火の輪
一頭のライオンが駆けてきて
ひと跳びにくぐり抜けていった
その先は草原になっていて
私の心は金色だった
はてしない夕暮れに染められた
空の布地に、鳥たちの影が
ちいさな穴をあけてゆき
猟銃の乾いた音が
時折何処かから聞こえてくる
森のほうには川があって
私の心は蒼かった
そして、とても静かだった
魚たちは歌わないし
水草も口を噤んでいた
けれども、私が
あなたをこの手で殴った日
川は荒れ狂い
魚たちは姿を消した
水草は呼吸を速め
ライオンは猟師に撃たれてしまった
それから全ての亡骸を覆うように
夕暮れの破片が落ちてきて
私の心は白くなった
その上にもう何も
描くことができないくらいに
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