みぎみみ/灰泥軽茶
 
が聴こえてきて
あれれ新しい改札機の音かなと思ったが
それから時折りなにかの拍子に
缶コーヒーのプルトップをあけた時や
自転車のベルを鳴らした時
お財布の小銭がちょうどなくなった時など
鳴るようになり
二、三日に一回程度のことだった

思いがけずなにかの拍子に
どこかで聴いたことがあるような
楽しげで柔らかいメロディが流れるので
自然と笑みがこぼれてしまい
今日はどこで鳴るのかわくわくし
ここで鳴るのかとうきうきする毎日が続いていた

もうひとつの右耳のことは
ポケットに入れたまますっかり忘れており
そういればあの右耳はどうしたかなと
ポケットをまさぐり出して
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