熱狂/salco
 
高一の冬休み
駅前の割烹でお運びのバイトをした
一階がテーブル席、二階は座敷
宴会料理のお造りや鍋はそちらの厨房で
専任の板前とパート二、三人が誂える
多い時は社長夫婦も加わる
夕方から十一時まで
宴席を片しに行っては大学生の二人と
酔客の忘れ煙草をガメていたが
眉もひそめず優しくしてくれた
四十代、五十代のおばさん達は
素足で冷えないのかと
毎日のように訊いては呆れ顔をした

そんな夕刻
準備中の二階が騒ぎになった
駆け下りて来たおばさんが小声で
ねずみが出たと報告し
板長と二、三人が加勢に行った
ドタドタ、ガタガタが少時続き
静まり返った
戻って来た板長とは対照的に
女性陣は一様に興奮していた
夢中で追い詰めたねずみを
スリッパやサンダルで叩いたのだと
感嘆符で上気を鎮めているようだった
藍染めの上っ張りの抜き柄に
小さな血飛沫が染みていた
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