アオミドロ(散文詩)/そらの珊瑚
に隠し持っていることを知った。それが原因かどうかわからないが(単に市街化計画だったのだろうが)数年後橋は撤去され、川は道路の下に隠されてしまった。実家も建て替えられ、大きな柿の木は切られ、庭はつぶされ、駐車場になり、山羊を遊ばせた空き地には立派な七階建ての病院が建っている。整然として平坦な便利な街となった。いちいち自分専用の小さな橋を渡るという面倒な手続きを踏まずとも、行き来できるようになった。もうあの頃の風景は一見すると、どこにもない。
◇
橋は外界と自分とを結ぶ、あるいは異界の上に渡された通路であったようである。
見えなくてもそこにある。
道路に耳を当てれば、音が聴こえることだろう。ボールを飲み込み、若い母親の運転する車を飲み込み、子供を飲み込み、今はもう陽のささない暗闇で、川の水が流れていく音が。
それに付随して、アオミドロが奇妙な触手を手招きするようにゆらゆらと伸ばし、私を捕まえにくるのだ。
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