付箋/はなびーる
 
理不尽に剥がされもする
あこがれの図書館の本に
ぼくがひょいと顔を出したものなどないだろう?

そのとき、だれかがささやいた

     でも、あなたはだいじな道しるべ。
     あなたがいるから、同じ頁がくりかえし開かれる。
     あなたは、知の世界に新しい酸素を送る肺胞なのよ。
     私はもう、忘れ去られそうだけど。

ぼくが挟まれた頁の
活版印刷の文字の「女」がつぶやいた
黒く濡れて
ため息交じりに滲んだ声で

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