鏡の塔 (生体反応の設計)/乾 加津也
なにも映せない、一枚の歪んだ鏡の塔のようだ、鏡のむこうに空が抜けて、地面が抜ける、わたしと思う人(問い一)もさくりと抜けてしまうのに、わたしと思う人(問い二)の舌だけが粘り強く、鏡の縁を這う、たしかラ行変格活用のときにもそんな目で口から覗いていた、今は、られない不安に苛まれながら、あちこちではじまる味蕾の電撃を根掘り葉掘りいとおしむかのようだ、調和や協働の器官としては失格だが、もはやわたしと思う人(問い三)が滅失した以上、古史生態系の残党としてどうかガラス張りの評価を与えてほしい
だれも住めない家を建てる、成すには順序があるという、掘った地中の杭の上に基礎を乗せる、柱と壁と天井の構成が内向き
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