空に散る/永乃ゆち
優しい人たちの中に居て
独り頷けないでいる。
溶け出す氷山燃え尽きる森林。
過去の残骸に足を奪われる人々。
それでも生きている。
それでも生きていく。
優しい人たちの中に居て
独り泣き出しそうになっている。
地面に落ちる雷(いかずち)天を裂く海原。
愛の名のもとに祈りを捧げる人々。
そうやって生きている。
そうやって生きていく。
それなのに。
頷けない。泣き出したい。
この弱過ぎる生き物を
決して許さないでほしい。
蔑んで踏み付けて欠片も残さないほど傷付けて。
空に散りたい。
できるなら本当は
優しい人たちの行く先を照らす光の一つに。
なりたかった。
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