月の石(順不同)/吉岡ペペロ
 


カマンヌは四十過ぎの浅黒い男だった

その顔にはこめかみから唇にかけて深い傷があった

スダーイは十歳にも満たない男の子だった

ひとめ見て誰もがきっちりとした子供の印象を覚える

アマリアもカマンヌも旅のなかでスダーイのその優等な外見に助けられていた

旅から旅を常とした者がもつ虚無的で不穏な慌ただしさ

それにスダーイの存在が正当性をもたらしてくれていた

アマリアはスダーイの横顔を注意しながら見つめた

そしてカマンヌの傷を注意しながら見つめた

ふたりの鳩がおなじなら私の鳩も彼らとおなじでありたいと思った






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