感性は理性の食卓に満足できない/ただのみきや
 
時間のオブジェなんぞ飾った
キザなダイニングテーブルで
おれたちの議論といえば
百万回も繰り返された
チェスの攻防だ

おまえの遺体の第一発見者となった
夢を見たことを黙っていたのは
貸しを作るためではない
おれはおまえに対していつだって
温情を忘れてはいないってことだ
切っても切れない腐れ縁
お互い逃れる術はないからな

原子力でも搭載したかのような
音を響かせている冷蔵庫から
おまえはおよそ食い物らしくない
いくつかの素材を取り出しては
無造作に皿にならべたてる

目のない魚が見る夢
丸い水滴に根ざす食虫植物の雌しべ
誰かの思い出から掘り出した

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