土曜日の上気/たちばなまこと
定刻の十分前に飛び出した
マンションの駐車場では雨の余韻
生まれたての水たまりには波紋
また 小雨
浸るよりも先に 走らなくてはいけない
休み 休み 土曜は休み
流れる空気の弾力さえも休み
逆走する坂道で出会う休日の顔達が
なげなわで狙ってくる
せまる地下鉄の入り口は明るく
オリンピックに間に合わせた地上の地下の話を
思い出す
駆け上がったって
二段も飛ばして手足を振り千切ったって
間に合わないものは仕方がないよね
ゆるい車内のゆるい顔達の中では
他人事の冷却のように活字をなぞる
ささくれにはクリームぐらい すりこめばよかった
セーラー服が見当た
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