十六夜の庭/石田とわ
 
たち
           愛おしくて苦しいものたち
           きみに聞かせたい話はたくさんあるのに
           話すための言葉がここにはない
           
           けれどこれだけは伝えよう
           想い出を抱くための時はもう終わったのだと
           この庭で釣れる想い出は少なくなるだろう
           やがてはなにも釣れなくなるかもしれない
           それでもきみにはこの庭にいてほしい
           たとえ、わたしが訪れなくなってもだ
           
           この庭できみと釣りをして
           大切なものたちに抱かれているのだと
           そう思うことがわたしを強くする
           想い出は消えることはないだろう
           ただわたしの中で息づく鼓動に血脈に変わるだけだ
           
           十六夜の月の下、泳ぐ想い出をきみと釣る






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