「ぽっくり死にたいね。」/板谷みきょう
 


そんなことを
仲間たちで話し合えるのって
素敵じゃない?

突然、話し掛けられて
私は口ごもる

  自分の下の始末が
  出来なくて
  夜中に当てられたオムツを
  時間毎に交換される

  自分が何処に居て
  何をしてるのかも解らなくて
  大騒ぎをする人も知ってる

  積み重ねてきた人格も人徳とも
  無縁になって
  すっかり遠くなった聞こえない耳で
  黙りこくってる人や

  車椅子に乗せられても
  自分では操作して
  動くこともできない人も見てる

たぶん

他の人に迷惑を掛けて
時には
世話をする人の焦燥に
苛められながら

思い通りにならないで
細々とした命の残り火を
灯されながら
最期を過ごすだろう

ぽっくりと死ぬことが
素敵だとも思わずに


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