雲間の窓 /服部 剛
 
お年寄りが耳から外した 
補聴器の電池が外れて 
キーと、鳴っている 

僕自身の内にある 
電池も少し、外れているので 
脳の何処かが
キーと、鳴り 

雲に覆われた空から
(天の声)が聴こえない 

だから僕は今日も職場で 
誰かと争いそうになったのだ。 
自らを小さく卑下してしまうのだ。 

この胸の内にある 
小さい太陽電池の丸みを 
所定の位置にぐいと押しこみ 
(もう一つの眼)を開く時  

争いそうな人のこころに 
縮まりそうな僕のこころに 
雲間の窓が、開かれる 







戻る   Point(2)