土曜日の決闘/ただのみきや
土曜日
仕事は少し早く終わる
4時過ぎごろバス停に行くと
たいがい彼もそこにいて
いつもと同じことを話しかけてくる
「こんにちは」
「こんにちは」
「いま なん時」
「4時15分くらいかな」
「どこまで乗ってく」
「手稲本町まで」
「おれは星置まで」
「ねえバスなんでまだ来ない」
「さあ 遅れているんじゃない」
近くの授産施設で働く
知的障害者の男性だ
背は同じくらいだが
いつも上から見下ろすような
それでいていつも楽しそうな
流し目でこっちを見ている
たいてい同じバスに乗り
別の席に座るか立つか
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