愛/ただのみきや
は 愛ではない
愛は鳩のように
宿ったかと思うと
また飛び去ってしまう
おそらく人の心ってやつは
よほど居心地が悪いのだろう
そして残された人々は
互いの胸にぽっかりと空いた
冷たい穴を見ては
途方にくれてしまうのだ
だからイミテーションが必要になる
本物そっくりのものが
本物ではないから
別のものもいろいろ必要になるのだ
例えば ルールとか
見て見ぬふり とか
忘れてしまう とか
本音の本音は言わない とか
こっそり涙をながす とか
本物は太陽のよう 人の心の
冷たく暗い虚無の宇宙をも
いつも温め続けられるほどに
イミテーションは 外側だけ
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