Spotted water(豊穣のひと)/恋月 ぴの
 
愛したい
あなたの歯並び
わたしは愛したい
あなたの耳たぶ
わたしは愛したい
あなたの襟足

猫である
愛である




愛するふたりは手を繋ぐ

愛の在り様を確かめたくて
それぞれの本意を確かめたくて

固く繋ぎあいながらも
ふと離してしまいたくなる誘惑にかられつつ

胸元に秘めた氷の刃
抜くか
抜かぬか
迷い箸は心の迷い

どこかで猫が鳴いているよな

それこそが愛の真実と鳴いているよな




わたしは愛したい
あなたの鎖骨
わたしは愛したい
あなたの尾?骨
わたしは愛したい
あなたの恥骨

猫である
愛である




何故に人は未来を我が子に託すのだろう

あなたの語る夢の端々は
切望してやまぬ男児の歩みが総てなら

やんごとなき夜毎の神事と
獣のかたちで繋がる夫婦(めおと)の乾き

どこかで猫が鳴いているよな

それこそが愛の真実と鳴いているよな




猫である
愛である





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