白いけむりの風景/ただのみきや
降り続いた大雪は止み
白く埋もれた住宅地が
青く澄んだ空に覆われている
朝は
つめたくて
まぶしくて
目が八の字だ
ビルのない地域にただ一つ
すっくと立っている
ごみ焼却場の煙突は
しま模様のセーターを着た
のっぽの愛煙家さながらに
大蛇のような白いけむりを燻らせて
まるで雲の製造工場だ
本当はそんなに
きれいなものではない
からだによいものでは決してない
だがそのけむりの塔は
あまりにも風景の中で存在感を持ち
それなしには思い起こさなかったであろう
古いイメージをひも解いた
まだ幼いころ
死んだ祖父のかすかな
記憶はすでにモノクロで
暗く古い木造家屋の
石炭ストーブの前にあぐらをかいて
背中をまるめ
ゆっ くりと
たばこのけむりを
はきだしていた
おともなく
死ぬまで
やめられなかった
たばこは 少し
寿命を縮めたろうか
白い
けむりの風景
ゆっくりと
のぼり
うっすらとして
消えて行く
どこまでも
青く
冷たい
冬の空を
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