あなたという詩集を読む/ただのみきや
鯨が暴れ出すと
感傷の津波が押し寄せる
鯨と一緒に歌うものか
もっと深く潜るのだ
ページをめくれ
蒼天に乾いた砂埃が舞う
砂と岩の道なき道
こんな冒険ばかりだ
何が 何気ない日常だ
あなたの日常は詩情なんだ
いろいろな事情の二乗
かけ合わされた言葉はもはや尋常ではない
たいした根性だ
乾いた砂漠のイメージの中で
ぼくはサメの歯をひろった
古いものだ
あちらこちらに痕跡がある
ここは昔海だったのだろう
あなたの詩の中に時々よぎる
虚無と荒廃のイメージ
風化したいのちの声を
なんとか繋ぎ止めよるとするかのように
昔いのち溢れる海だったことを
思い起こそうとするかのように
日々堆積して行くありふれた出来事から
あなたはあなたにしか見えない
詩の原石を掘り出して
事象を包む装いを 一枚
また一枚と脱がして行く
そうせずにはいられない
あなたの
口元を想像してみる
あなたという詩集を読む
ページをめくるごとに
悔しいけれど
恋をする
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