森心あれば/木屋 亞万
いて欲しいの
大地に根を張ることを辞めたら
鳥になれるわけではないの
架空の存在になってしまうわ
雲と虹
あの子たちはよく泣いているわね
私は渋いのは嫌いだから
汚れを落として
皮を剥ぎましょう
寒空の下つるしておけば
そのうち枯れて甘みも出るわ
女はいいのよ勝手に熟れるわ
じゅくじゅくしてきたら
穴をあけてほじくるように
食べればいいのよ
舌がしびれる甘い蜜に
指と顎を濡らせばいいわ
大地を離れた植物は
もはや植物ではないわ
植物を食べなくなった獣は
獣を食べるしか道がないのよ
大地があなたを縛り付けているように
思うことがあるかもしれない
けれど大地はあなたの身体
そこを離れていくときに
あなたは架空になってしまう
茶の味も
豆の味も
実の味も
すべて忘れて
空へ
あなたが架空になった日に
泣いてくれる存在が
近くにいればいいのだけれど
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