つま先の方向/永乃ゆち
 
言葉を遮って雨は流れていく。

虫の声は届かない。

紅いカプセルを飲みこんだら喉が渇く。
平熱を知らないから微熱も分からない。

畳の染みは何が原因だった?

消印のないまま隠した手紙は今もあの場所にある。

昨日と今日で煙草は何箱目?
一秒の長さが毎日違うのは何故?

出会う人はいると呟いた後ライターが切れた。
電話は鳴らない。

山へ行こう。
秋が来てる。
カーブを抜けて。

晴れたらの話。


でも未だに信じてる。
こんな夜にも近づいてる。
私のつま先の方向に

確かにそれはあると。
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