声/マーブル
 
君の髪の毛の隙間から声がする
ズズズズと浮き沈みを繰り返す声
その声はいずれこの部屋の
貧弱な空気を独占し
ぼくの穴だらけな肌の上に
優しく付着しようとした


部屋の隅と隅とで向かい合い
この世界じゃ君とぼくしか
存在しないんだとお互いが
緊迫していると感じ取る
三秒間隔で積みあがる
2人きりの羽化した想い
蝶になる


そっと観察してみる
トラウマとも言えるその
怯えた瞳の奥の湖では
睡蓮の花が静かに
咲き乱れていて
寒さに微震する
君はぼくから視線を外し
ふと立ち上がると
さっきよりもずっと
奇麗な切れ長の
凛々とした顔つきをし
白い瞼
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