語られた記憶(散文詩)/中川達矢
 
ひとは記憶を捏造しながら生きている。あそこにいたはずの僕は、ここにいる僕の記憶の中で生きていて、かつ、ひとの記憶の中ではいなくなっていた。人の記憶を僕は記憶できない。記憶には、記憶の代替不可能性が付きまとう。地面に足跡が残れば、僕の歩行が記録されるだろうが、今は足跡など残らない地面が設けられており、僕とひとは記録を踏み合い、そして、記憶を消し合う。もしかしたら僕はひとを消しているのかもしれない。ひとと話をすれば、僕だったはずの僕がひとになっている。ひとは僕を消して、笑いをとっているが、そのひとは僕だったはずだ。そのとき、僕は僕ではなかった。僕はその話を聞いているだけのひとだった。そして、その話を聞
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