「貧しいひと」 (青年詩片)/ベンジャミン
 
貧しいひとの手はなぜか淋しいかたちをしていて
貧しいひとの目はいつも悲しい言葉をさがしています

(本当はとてもきれいなものを求めているのに)

そう、
雪降る夜の冷たさは震える指を動かして
そしてまっすぐには書かせてくれないのです

貧しいひとはなぜか何も欲しがりません
貧しいひとはそれが貧しいとは思わないからです
貧しいひとはそういう貧しさに耐える心を持っていて
貧しいひとはそれを生きる力にしているのかもしれません
貧しいひとの手は何かに触れようとするから淋しく
貧しいひとの目は求めるものを探しています

たとえば幸という字をさかさに書いても
あなたが不思議に
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