さよなら人類 も けだものも それら以外も/竜門勇気
 

睫毛に綿毛が舞い降りて
溶けさっては眼鏡の内側に万華鏡のような光を爆発させる

雨合羽は優しくてなめらかで
世界とぼくの境界線として確かすぎる存在だ
鍵の束がポケットの中で硬く新しい振動を繰り返している
きっともう何本かタバコを吸って
コンビニから家に帰る頃には
どんなドアだって開けられないただのコインになってるだろう

さよなら 人類も ケダモノも
コインも カギも なにもかも
ぼくと関係のない世界に行ってしまってくれ

さよなら 恋人も トモダチも
居場所も 文明も なにもかも
この雪に隠れたその後は一緒に溶けて消えてくれ

コンビニまでたどり着く前に
ぼくがこのひどい吹雪に紛れていなくなる前に
さよならを言わせてくれ
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