人魚脚/ああああ
 
 パーテーションっていう教室をしきる板を2枚持って運んでるときに「阿部君磁石貸して」と声をかけられた。ぼくを呼んだのは吉田さんっていう人だった。「左のポケットに入ってるから勝手にとって」って答えて立ち止まって振り返ると吉田さんが押してきた車椅子に人魚脚が乗ってた。ぼくは人魚脚をそのときはじめて見たんだけど、人魚脚はつま先まですっぽり隠れる長いスカートをはいて車椅子に乗っていたので彼女の足がわがままで労働に従事しようとしないみたいな感じでなんとなくおかしかった。

 吉田さんが磁石を受け取ると、人魚脚は両手のひらをパーにして上に向けた。化粧っぽい色の手だった。ところどころにきらきらと塩の結晶のよ
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