ウブゴヱ/望月 ゆき
 
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 空がひとつ、短く呼吸をして、タクトが振られる。
 と同時に、ティンパニが鳴りひびき、世界が崩れ落ちていく。無声映画のそれのように、 立ちつくすわたしの背中に、スローモーションで再生されていく。
 さながら、驟雨。

 海が、内側へ、内側へと、呼ばれている。

 メトロノームは破壊され、空間は混沌としている。それでも中心で、鼓動が、不規則に打ちつづけられ、幾重もの波動が描かれていく。ならば、わたしはきっと、その線譜に、旋律をのせよう。
 歌声だけが、死を、迂回できる。

 言葉をもたない景色のなかで、在りつづけるためには、理由が必要だ。

 樹木の並び、草の高
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