自我の墓標/マチムラ
 
続けられるのであれば
私は夫の首筋の香りに
子供の瞳の奥に
あらゆる幸福のモンタージュを創作し
手を入れ続けるでしょう
それが私に人としての本当を
約束してくれるとしても
私の有限の体を穿ち
言葉の無限と恒久を頼りにして
這い上がろうとする
この半日陰性植物の様な自我の
その頼りない芽に
ささやかなもう一つの墓標を託しても
良いのではないでしょうか

この様な人生の処し方を嗜むからには
行き先の異なる先発列車ばかりを
見送らなくてはならないとしても
私の存在を計画しようとする
刹那的な望みの中に
死してもなお歌い続ける
白い巻貝が結晶し
ぼんやりと耳を押し当てる
私の様な人のいることを
今ここで願ってやまないのです
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